2013.05.19 執筆

気になるものは気になるんです

エレンピオスの科学技術は、リーゼ・マクシアの技術を一線を画している。そう、はっきりと自覚をしたのは生活水準の違いだった。
例えば、照明。リーゼ・マクシアが誇る夜域の街イル・ファンでは、発光樹を職人達の手で灯しながら光を創りだす。比べて、エレンピオスはどうだろう。
ボタン一つ押せば、白熱灯に光が灯る。室内は明るい人工の光に照らされ、発行樹の数倍の明るさを届けてくれる。一度この手軽さと利便さを知った人間が、技術を手放せないのは道理のようにも思えた。つまるところ、エレンピオスの照明を灯すことはとても簡単なことなのだ。指先一本、ただボタンを押すだけ。
「あ、あの……ミラ……?」
明るい光はジュードの鍛えられた胸筋に陰影を作る。
その上に覆いかぶさるようにして衣服を取り払ったミラが裸のジュードの上にのしかかっていた。そのルビーのような瞳は、一心不乱にジュードの下腹部に注がれている。
「ふむ」
そうして勃ち上がるジュードの分身とも呼べる『ソレ』をまじまじと見つめながら、感嘆のため息を吐いた。
「男性器とはこのような形をしているものなのだな」
光に照らされたが故に、細部まではっきりと見渡せる。恥ずかしげもなく自身の裸体を晒しながら性器を眺めるミラに、覆いかぶさられているジュードの方が赤面した。
「ちょっ…ミラ……あ、あんまりじっくりと見ないで……」
「何を言うか。君の大切なところなのだろう。私によく見せてくれ」
「でも、こんなの……そんな、綺麗なところじゃないし……」
正面からミラの顔を見ていられない。咄嗟に目元を手で覆ったジュードに、ミラはふんわりと微笑んで言った。
「何を言っているのだ。ジュード、君の性器だ。愛おしさを感じることはあるにせよ、嫌悪する対象になるわけもない」
「ミラぁ……」
「男性の性器とはこうなっているのだな……」
つんつんと白い指先が、そそり立つジュードの肉棒に触れる。押せば柔らかい弾力を返す感触に、ミラはやはり興味深そうな反応を返した。完全に遊ばれている。そうは分かってはいても明るい照明の下、惜しげもなく白い肌を晒すミラを見ていられなくて、ジュードはされるがままになっていた。
「ぷにぷにとしているぞ」
「そ……そうかな……?」
「それでいて、意外に太さもある。これが以前私の膣の中に収まったのだな」
「み、ミラ、もうちょっと言葉を選んで……」
「むぅ、何か間違っていただろうか?」
「いや、間違ってないよ。間違ってはないけど……」
「どうなのだ?」
「どうとも言えないというかなんと言うか……」
モゴモゴと言葉尻を濁すジュードに、ミラの方も痺れを切らしたらしい。きりりと表情を引き締めると、ミラはやけにはっきりとした口調で宣言した。
「ああもう、まどろっこしい。やることは一緒なのだ。さあやるぞ、ジュード!」
一度は既に結ばれた身だ。私たちの間に何も遠慮することはない。そう言い切るやいなや、ミラはジュードの肉棒をぐわしと握り締めた。
「ちょ、ミラ、痛い……!」
「あ、ああ、すまない。君の敏感なところだったな。大切に扱わなければ」
「あの、ほんと連呼しないで……は、恥ずかしいよ……」
「今からもっと恥ずかしいことをするのに、君は不思議だな」
「ミラの踏ん切りが良すぎるんだよ……」
「そういうものか」
「そういうものなのっ」
声を荒げるジュードにお構いなく、ミラは目の前にそそり立つジュード自身に手をかけた。白い指先がゆっくりと肉棒を撫でてゆく。先走りの透明な汁が、玉となって先端部に光っていた。それを興味深げに指先で拭い取り、唇へと運ぶ。
「……独特な味がするな」
「み、み、み、ミラ!?何を……」
「君のここを綺麗にしてやろうと思って」
「ちょ、待って……!」
「待たない」
ちゅう、とミラがジュードの肉棒に口付けを落とした。先端部、側面、睾丸へと順番に音を立てて唇を落とす。次第にその行為に慣れてきたのか、徐々に舌先で撫でるというオプションまでつけらていくのには参った。ふるふると首を振りながら、指先でミラを押し止めようとするジュードの手のひらには何の力も篭っていない。初心な反応を返すジュードに愛おしさを込めて、ちゅうとミラは先端部を口に含んだ。
途端、ジュードの体は電流が流れたかのように小さく跳ねた。
「あ……み、みら……っ!」
「ふむ。含んだ方が良さそうだな」
そう言うや否や、ミラはぱくりとジュードの肉棒をくわえ込んだ。柔らかいそれを最初はただ舌を絡ませてゆくように、次第に慣れてきたのか、口全体を使ってすぼめたり、吸い付いたりしてゆく。
「んん……っ!」
ジュードの反応を見ながら、ミラは着実に感じるところを探り当てていっていた。やはり、膣と同じような感覚を与えることが良いのだろう。時に圧迫感を与え、緩め、適度な刺激を与えることが快楽へと繋がるようだ。
そう分析しながら、ミラもまた自身が興奮していることを感じ取っていた。まだなんの愛撫も受けていないはずなのに、自身の股の愛だから愛液が溢れ落ちていることが感じられる。とろとろと太ももを伝う感覚を見て見ぬふりをしながら、ミラは強くジュードの肉棒に吸い付いた。
「あっ……あっ、あ」
断続的に溢れる声に気を良くして、先ほどジュードが過敏に反応した刺激を繰り返す。睾丸を指先で刺激を与えながら、深く肉棒を咥え込めば、ジュードはびくんと大きく体を揺らした。
瞬間、口の中にえぐみのある味が広がる。――――ジュードが口内で射精をしたのだ。
「はぁっ……はっ………はぁ、み、ミラ……ごめん、口の中に……」
「ん、く……。問題ない。君の精は飲み込んだよ」
「む、無理しないで……」
「何を言うか。刺激を与えたのは私だ。きちんと始末をするのは私の勤めだ」
「ミラ……」
そう言って、ミラはジュードの肉棒に舌を沿わせて表面を綺麗に舐めとった。そうして、にこりと微笑んで体を起こしたジュードの前に座る。
「君の性器に触れていたら、私も感じてしまっていたようだ」
もうこんなに。そう続けて、照れたように自身の腿へと視線を下ろしたミラの動きに釣られるようにして、ジュードも視線を下ろした。
十分な刺激らしい刺激を与えていないはずなのに、ミラの太ももには透明な雫が伝い落ちている。ぱたり、と動いた拍子に雫がシーツに染みを作ったのが酷く印象的だった。
「なあ、ジュード」
ルビーの瞳がゆらりと揺らめいている。
「……君が欲しい」
その揺らめきと共に囁かれた、甘美な誘いを断る理由もない。
照明の下に照らされた細い腰を引き寄せて、ジュードはこくりと小さく頷いた。
CLOSE