2013.01.01 執筆

新年のご挨拶

火場<イフリタ>、地場<ラノーム>、風場<ラシルフ>、水場<ウンディス>の四つの大節で区切られるリーゼ・マクシアの気候は、ここ数年の間でずいぶんと変化した。
その原因として真っ先に挙げられるのは、十年前の断界殻<シェル>の開放だろう。断界殻は閉ざされていたリーゼ・マクシアだけでなく、黒匣<ジン>の過剰使用によって精霊が減少した荒廃世界・エレンピオスにも大きな影響を与えた。
マナが満ち満ちた国家リーゼ・マクシアと、枯渇した国家エレンピオス。
断界殻の開放により均一なマナで満たされた両国は、互いに抱える自然問題を一時的に解決した。しかし、あくまでそれは一時的なものだ。エレンピオスが黒匣の使用を続ければ、マナの源である精霊は死に絶え、今度こそ世界は衰退してしまう。
断界殻開放は、人類に与えられた猶予の時間だった。しかし、黒匣により発展を遂げてきたエレンピオスは、今更黒匣をなくすことはできない。
そこで台頭してきたのが黒匣に代わる新しい人工精霊技術――――源霊匣<オリジン>の存在だ。
霊力野<ゲート>を持つリーゼ・マクシア人が、増霊極<ブースター>を使って精霊の化石にマナを注ぎ込めば発動する源霊匣は、具現させる精霊に信頼の証を与え、協力を仰ぐことによって、実用化まで踏み切れる成功率を弾き出した。
そしてその基礎理論を確立した学者の名は、ジュード・マティス。
断界殻を開いた張本人であり――――また、15歳という若さで源霊匣研究界に飛び込み、黒匣による自然問題に真正面から提起した人物だった。数年前にその功績が認められれ、リーゼ・マクシアでは学者の最高栄誉とも言われるハオ賞を受賞した若き秀才だ。
断界殻開放の功績者。
黒匣による自然問題提起の権威。
源霊匣研究の第一人者。
歩けば通り名が飛び交う彼も、源霊匣の研究を始めた頃は単なる少年に過ぎなかった。
しかし、季節は巡る。十に渡る季節を越え、少年から青年へ、大人の男性としての魅力を兼ね揃えたジュードは、つまるところ俗に言う『イイオトコ』へと成長していた。
元々異彩放つ精霊に好かれやすい性質を持っていたことを抜きにしても、25歳という結婚適齢期を迎えた彼は、とにかくモテた。非常にモテた。
なので風霊終節も終わりに近づくこの季節に、ヘリオボーグ研究所で年を迎えると言ったジュードに驚きを隠さなかったのは一人や二人ではなかった。
研究所内部の女性陣の間で密かな抗争さえ勃発していたのだが、当の本人はさっぱり気がつく素振りも見せず、一人きりで年を明けるにしては妙にウキウキした様子だった。
「最近ご機嫌だね」
そう不思議そうに首を傾げたバランにだけ、ジュードは事の真相を告げた。
「ミラが久しぶりにこっちへ来れそうなんです」
知らせはミュゼが持ってきてくれました。
そう嬉しそうにジュードは表情を綻ばせる。それを見て、ようやくバランはここ暫くジュードが落ち着かなかった原因に納得がいった。
ハオ賞受賞の際あいまみえて以来、その姿すら確かめることができなかった彼女と久しぶりの再会となるのだ。それは浮き足も立つというものだろう。
「確かに最近は、エレンピオスのマナも安定してきたからなぁ。ようやくマクスウェルが具現しても問題のないレベルになったってことかな」
「はい。ミュゼも、ここまで安定してきたのなら大丈夫だろうって言ってました」
今かかっている精霊の誕生を見届けたら、暫くこちらに滞在できそうなんです。
心の底から喜んでいる様子のジュードの明るい表情に、バランもまた小さく笑みを零す。そうしてふと思いついたように、ぽろりとその言葉を零した。
「あれ。そしたら暫くここに滞在するのはまずいんじゃない?」
「え?どういうことです?」
「どういうことも何も……久しぶりに彼女に会うのに、場所が研究所っていうのは色気がないんじゃない?」
「……って言っても僕の自室は、今人が来れるような状態じゃないですし。ミラも見慣れたこっちの方がいいかなって」
研究を始めた頃はバランの部屋をシェアしていたジュードも、それなりの収入を得るようになってからはすでに独立している。リーゼ・マクシアとエレンピオスを飛び回る彼の拠点は、交通の利便性という観点から、やはりというかトリグラフのマンションとなっていた。
一室のみならず、資料用に二室も借りているジュードの立場を考えれば、マンションで新年を迎えるのが一般的だろう。
彼氏彼女の一般事情がどうやら抜け落ちているらしいジュードに、心底呆れたようにバランは大きなため息を履いた。
「……ひめはじめって言葉知ってる?」
「!!!?!?」
瞬間、ジュードは目を白黒させて大きく咳き込んだ。
見ているバランが感心するほど耳まで赤く染めたジュードは、恨みがましい目でこちらを睨む。
年を重ねてもこういう反応が返ってくるからこの人可愛いとか言われるんだろうなー。と心の中で小さく毒づいて、バランは進んでは言いたくない言葉ではあるものの、一応所長の立場として口にすることにした。
「君たちもいい年してるんだし、することはしてるでしょう?分かってるとは思うけど、研究所内では控えておいてね」
君に限ってそんなことはないとは思うけど、一応ここには重要な機材置いてるわけだし。まさかホテル取る手間を惜しむような甲斐性なしじゃないよね?
と、言い終える前に必死の形相のジュードの言葉に遮られる。
「分かりました、分かりましたからっ!!」
「だったらよろしい」
にやりと笑えば、恨みがましい視線とぶつかった。
数々の輝かしい功績を打ち立てたマティス教授のこういった一面を見られるのはずいぶん久しぶりだ。それがなんだかおかしくて、バランは声を上げて笑った。
「別に僕とミラはそういうことするのが目的で会うわけじゃ……」
「でも、したくないわけじゃないでしょ?」
そこで思わず黙り込むのが、ジュードの素直なところだ。
いや、まあ一般男性なら当然の反応だと思うけどね。
「だったらほら、すぐホテルの予約取る。今からとっとかないといい部屋なくなっちゃうよ」
「分かりましたってば!」





そんなやりとりをしたのが、数週間前。
今振り返ってみれば、精霊の誕生がいつ終わるかもはっきり分からないのに、新年に合わせてホテルをとってしまった辺りで完全にバランさんの手のひらで転がされている。
恋愛方面に関して不器用な自分を改めて突きつけられたような気がして、ジュードは思わず項垂れた。そんなジュードの様子に、落ち着いた女性の声がかけられる。
「どうしたのだ、ジュード」
「ミラ」
振り返った先には、待ち焦がれた彼女の姿があった。
ミラの出現はいつだって唐突だ。今回は列車に乗っている時に現れたものだから、周りの人がビックリしていたっけ。大慌ててミラを引っ張り出して、トリグラフの自室で荷物をまとめたのが今朝のこと。ホテルの予約を取っていたその日に現れたミラは、きっと何のことだかさっぱりだっただろう。マクスバードからイル・ファンへ。めまぐるしい移動を終えて、宿についたのが先ほどのことだった。
「な、なんでもないよ。それよりいきなり移動させちゃってごめんね。疲れたでしょ」
「いいや、このくらい大したことないよ」
以前はこの程度の移動、頻繁に行っていたのだから。
初めて僕らが出会ったときのことを言っているのだろう。どこか懐かしそうにミラは瞳を揺らせて、宿の窓辺へと近づいた。
「君と初めて出会ったのも……この街だったな」
「うん。初めてミラと会った時はいきなり水の中に閉じ込められちゃったんだもの。びっくりしたな」
「……あの頃はまだ、人とどう接すれば良いのか加減を知らなかったのだ」
拗ねたようにミラが僕へと振り返る。
その立ち姿の背景に、見慣れたイル・ファンの夜景が浮かび上がってひどく幻想的だった。
初めてミラと出会ったときのイル・ファンはまだ夜域に包まれていたんだっけ。今では昼夜のある環境へと変わってしまったけれど、夜の帳が落ちたイル・ファンの美しさは相変わらずだ。そして、その中に佇むミラの姿も。
やっぱり、この宿を選んで良かった。
初めてミラと出会ったこの街で、もう一度微笑み合えることができる奇跡に胸が震えた。
「君は……随分変わったな」
自身の手のひらを眺めながら、ミラは噛み締めるようにして呟く。そのルビーの瞳に見慣れた僕の姿が浮かび上がった。
「あれから十年経ったからね」
「……十年か」
その月日は、長いようで短かったような気もする。それでも過ぎ去った時間は、確かに僕らの中で息づいていて。
見下ろしたミラのつむじを見たときの感動は、未だに忘れていない。
いつかミラを追い越したくて必死で牛乳を飲んだりしたのもいい思い出だ。とはいっても、それほど飛び抜けて大きいわけじゃないけれど。
「こうやってミラを抱きしめても、格好がつくようになった」
すぐそばにあった細い肩を抱き寄せれば、胸の中にすっぽりと収まる。耳元で甘く囁けば、ミラもまた他では見せないような特別な表情を見せた。
「だが、私は変わらない。……君は人として年を重ね、成熟してゆくだろう。その過程を隣で見ることができないのが――――…」
噛み締めるようにつぶやく唇に、そっと人差し指を押し当てる。
それは僕らにとって今更なことだ。人と精霊と、二つの立場からそれぞれ世界を良くしよう。十年前に見上げた空のことを、僕たちは忘れていない。
「ジュード」
見上げるミラの瞳は、あの時と変わらず吸い込まれそうなくらい綺麗だ。
白い頬に手を添えれば、少しだけ甘えたようなミラの表情がすぐそばにある。
「……ん」
啄むように唇を重ねて、それからやっぱり宿をとっておいて良かったな、なんてことを思った。
角度を変えて唇を重ね合わせる。
最初は触れるだけの口付けも、繰り返していくうちに次第に激しさを増してゆく。伸ばした舌を、ミラの口内を味わうように這わせてゆく。白い歯も、なめらかな舌も。余すことなく触れてしまいたくてじっくりと絡ませてゆく。
「ふっ……ん……む……」
お互いの唇から溢れた唾液が顎を伝って落ちていった。
そんな光景ですらひどく扇情的だ。とろけたルビーの瞳を真正面から見つめ直して、もう一度深く口付けてゆく。
このまま全部溶け合ってしまえれば、ずっと一緒にいられるのに。叶わないことだと分かっていても、ミラに触れている場所の熱さに思考が融かされてゆく。
溢れる声も、甘い肌も。強い意志を煌めかせるその瞳も。彼女を形作る何もかもが愛おしい――――…。
「……っ…は、じゅー…どっ…」
細い指先がジュードの肩を掴む。
ほんの少しだけ力を込めて押されれば、不意を突かれたジュードの体は簡単にベッドの上に落ちていった。先制をかけた形となったミラは、てらてらと光る唇を指先で拭って微笑む。
「油断大敵だぞ、ジュード」
「ミラ相手に気を張る理由はないよ」
ベッドの上で馬乗りにされても、ジュードは動じずに柔らかく微笑み返した。このあたりの反応が十年前と違うのは、それなりに経験を積んできた大人の余裕からか。
「でも」
にこ、と唇は弧を描いたまま、ジュードは有無を言わさない力でミラの背中を抱き込んだ。
「僕としてはこっちの体制の方がいいかな」
一瞬の間に入れ替わった体制に、ミラが目を白黒させた。
いくら精霊と言っても、ミラの体のベースは人間の女性だ。引き寄せられる腕の力も、体格も、成人男性となったジュードとはあまりにも違う。
ベッドの上に広がった豊かな金髪をひと房つまんだジュードが、壊れ物を扱うようにうやうやしく口付ける。その光景を目の前に突きつけられては、流石のミラもたまらない。
「…き、きみは……よく、そんな恥ずかしいことができるな……」
「ミラに言われるとは思わなかったけど……」
瞬きをしたジュードは少しばかり驚いたように見下ろしたものの、ミラの言葉が羞恥心を隠すための行動だと気がついて小さく笑う。
「相手がミラだからだよ」
ちょっと気障すぎたかかな?僕には似合わないや、と苦笑を漏らそうとしたところで、ジュードは意外な光景を目にする。
あの、ミラが。――――耳まで真っ赤になって僕を見上げている。
「かわいい」
思わず溢れた。
だって、ミラがかわいいのがいけない。普段は凛々しいという言葉が似合うミラが、こんな姿を見せるだなんて反則だ。
「……ひゃっ!?」
こんなにかわいい生き物が目の前で据え膳よろしく転がっているのに、手を出さない道理はない。
柔らかそうな耳たぶを甘く噛めば、驚きに短い悲鳴が上がる。
その音色を楽しみながら、ゆっくりと唇を首筋へと這わせてゆく。そろそろと舌先で喉をなぞれば、甘い声が上がった。
ミラは体も声も、何もかもが甘い。
「あっ……ん、ジュード……っ」
「ミラ……」
伸ばされた腕は首元に絡められた。そのまま引き寄せられるようにして胸元に顔を抱き込まれる。瞬間、柔らかい質量が顔面に押し付けられた。
無自覚に押し当てられた膨らみはミラにとって敏感なところであることを、彼女は理解しているのだろうか?
思わずいじわるな考えが鎌首を持ち上げた。服の上から指で包み込むように押し上げれば、ミラの表情が悩ましげなものに変わる。
「……ね、ミラ」
「はっ……んぅ…?」
わざと中心部を避けるようにして、服の上から胸を揉みしだいてゆく。指先を跳ね返すような瑞々しい弾力は相変わらずだった。
見た目通りの迫力を持つ質量は、押せば柔らかく押し返し、唇を寄せば吸いつくようだ。服の上からの感触にもどかしそうに身を捩ったミラの耳元でわざといじわるな声音を出して囁く。
「どうして欲しい?」
とろりととろけたルビーの瞳は、欲情の色に染まっていた。
ピンク色に顔色を染めたミラが、どこか夢現のように唇を震わせる。
「………っ…ジュード、分かって……っ」
「言ってくれなきゃやだ」
「んん……っ」
服の上からでも明らかに主張を始めた先端部は、ぷっくりと盛り上がっている。その部分に触れるか触れないかの位置で指を這わせば、面白いくらいにミラの体が跳ねた。
僕の指に感じてる。
……欲しがって、くれている。
「ミラ」
「じゅーど」
呂律が回らない唇で懇願される。私の胸に触れて欲しい、と。
「……っ…」
僕以外に見せることのないミラの蕩け切った表情が、たまらなかった。マクスウェルとしてのミラはそうはいかなくとも、今ここにいるミラは僕のためだけにいる――――その事実に、心が打ち震える。
ミラの体を覆う無粋な衣服を震える指先で捲り上げる。全部脱がすのさえ億劫で、まるで思春期の少年のようにミラの肢体にむしゃぶりついた。
綺麗なピンク色に充血し、今にも収穫してくださいと言わんばかりに震えている乳房の先端部に舌を這わせる。
「あっ…!」
短い悲鳴のような嬌声がミラの唇から零れ落ちた。
待ち焦がれた刺激を受けて無自覚に太ももを擦り合わせながら、潤みきった瞳でミラがジュードを見上げている。今更止められるわけもなく、ジュードはしどけなくベッドに沈むミラの姿に息を飲んだ。
とろりとした唾液にコーティングされた乳房が部屋の明かりに照らされて怪しく光っている。
ベッドの上に散らばった金色の髪。
とろとろに潤んだルビーのような瞳。
乱れた衣服から覗く素肌は、真っ白で……その何もかもに溺れてしまう。
片方の指で乳首を捏ねくり回しながら、唇はそのすらりとした腹部を辿ってゆく。吸い付いた場所に赤い花が咲くさまがミラに証を残しているようで、夢中になって吸い付いた。
唇が、下着に覆われた下肢にたどり着く。
すでにぐっしょりと濡れていて、下着としての機能を失っている黒い布切れの上にそっと唇を寄せた。――――熱い。ミラの匂いが充満しているそこへ鼻先を突きつける。
「んあぁっ!」
瞬間、いやいやをするようにミラが首を降った。普段の彼女らしからぬその幼い仕草が、たまらなく愛おしい。
くっきりと陰部の形を浮かび上がらせた布切れの上から順番に舌先でなぞっていく。快楽に反応して勃ちあがっている花芽を押し潰せば、ミラは一層敏感に跳ねた。
彼女らしからぬ乱れ方に、ジュードの箍も外れてゆく。
「ミラ……!」
愛液にしどどに濡れた下着を床に落とすと、たまらないと言わんばかりに直接敏感な部分を直接舌でねぶった。
柔らかく押し返す芽は、乳首以上にピンク色に充血し、張り詰めて今にも弾けてしまいそうだ。
「っ……ぁあっ…!」
熱い息を吹きかければ、明らかに先程までと違う反応。
「ミラ、いくの?」
「あんっ!ジュード……っ!」
今は喋ることでさえ、ミラの感度を高めてゆくようだ。ぴくぴくと震えるミラの下肢に頭を寄せ、今度こそ直接花芯にしゃぶりつく。クチュクチュと意図せず響く水音は、すでにミラの秘部が十分に潤っている証だ。
「あっ、あっあっ……!」
「ミラ……っ!」
断続的に響く嬌声にミラの限界が近いことを悟る。
ミラを気持ちよくさせてあげたい。その一心で、かり、とジュードは花芯を甘く噛んだ。
「あああああ――――――っ!!」
高い矯正を上げて、弓なりに背を反らせたミラは絶頂を迎えた。
荒い呼吸のために、豊満な乳房が上下に揺れる。もういい加減ジュードの方も限界だった。
「ミラ、僕ももう……っ」
「……あ、じゅーど……?」
絶頂を迎えたばかりで、焦点が定まっていないミラを気遣える余裕もほとんど残されていなかった。
足の付け根を持ち上げて、ぱっくりと開かれた陰唇に、爆ぜそうなくらい勃起したペニスを押し当てる。
「あっ…じゅーど、まだ……!」
十分な前戯にほぐされたミラの秘部は、彼女の言葉と裏腹に、吸い付くようにジュードのペニスを飲み込んでいった。
熱いミラの中に、何もかもが融かされてしまいそうだ――――…
「ミラっ……ミラっ……!」
「あっあっ……じゅーっ…ド……っ!」
勝手に動く腰を止められない。
膣の最奥まで挿入されたペニスを、緩急つけて出し入れすれば卑猥な音が室内に響き渡る。
我を見失いそうになる快楽に、視界を滲ませたミラが舌足らずな声でジュードの名を呼んだ。伸ばされた腕は、ジュードの指先を握り締める。
ぎゅう、と握り締めた指が離れないように二人はぴったりとくっついた。
「ジュードっ…ジュードっ……!」
「ミラ―――――!」
そうして、限界の時が来る。
瞬間的に白く染まった視界の中で、二人は互いの名前を呼び合った。




「新年、あけましておめでとうございます」
「ああ、おめでとう」
ベッドの中で、ぴったりと体を寄せ合った二人は互の顔を見つめ合って小さく笑った。
再会早々愛を確かめ合うことになったのはお互いに想像の範疇外だったものの、今はそれ以上に満足感があった。
見た目以上に逞しいジュードの腕に頭を乗せたミラが、すぐ傍の琥珀の瞳を覗き込んで微笑む。
「それにしてもあんなに積極的なジュードは初めて見たかもしれないぞ」
「そ、そうかな……」
「以前は私が上になって主導したものだったがな」
「それはそれで良かったんだけどね。ミラばかりにさせるわけにはいかないでしょ」
「そうか?」
「そうなのっ」
思わず強い口調になって、慌てたようにジュードが首を振る。
彼は彼なりに男のプライドだとかがあるらしい。そのあたりは深く追求せずに、ミラは少しだけつまらなさそうにジュードの胸に顔を寄せた。
素肌で触れるジュードの肌は、まるで初めから傍にあったかのようにしっくりと馴染む。
珍しく甘えるミラの仕草に、その細い腰ごと引き寄せてジュードは微笑んだ。
「ねえ、ミラ。僕、ミラに言いたいことがあるんだ」
「なんだ?ジュード」
お互いにお互いの姿を瞳に映し出して、至近距離で見つめ合う。
「僕は人間で、ミラは精霊だよね。でも、共にありたいという気持ちは一緒だと思っているから。だから――――…」
首から下げた青いガラス玉を愛おしげに撫でて、ジュードはミラへと告げる。

今年もよろしくお願いします。
今年だけじゃなくて、来年も、再来年も。その先もずっと――――…

世界で一番愛おしい彼だけの精霊に告げた言葉に、彼女はにっこりと破顔した。
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