2016.05.03 執筆
2018.03.03 公開

熱源

「食べちゃうにゃん」
 その返答は「いや~ん、これあげるから許して~」と口にしながらアイテムを渡すことである。
 こんなクソッタレな設定を作ったのは一体どこの馬鹿者なのか、一発ブン殴ってやらないと気がすまない。心底思うが、多分、これは現実逃避だ。目の前には、顔を林檎みたいに真っ赤にした少年の姿がある。
「た、食べちゃう、にゃん……」
 消え入りそうなほど小さな声で、しかしこちらをまっすぐに見つめている。
 「食べちゃうにゃん」に対する返答は決まっている。例の「いや~ん」だ。しかし私は唇を戦慄かせたまま、返答を返せずにいる。
「本当に、食べちゃいますよ……?」
 上目遣いで見上げてくるエメラルドグリーンの瞳が小憎たらしい。
 確かめるようなそのまなざしを一瞥すれば、首筋に小さな熱が落ちてきた。
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