2017.01.20 執筆
2018.03.03 公開

目玉

「じゃあ、いつならいいんですか。……僕らはルシなのに」
 その言葉に、ぎくりとした。
 指先に絡められた、成長過程にある細くて骨っぽい指先。普段は手袋に隠されているその場所も、今ばかりはあらわになっている。黒い格子状の文様の中に浮かび上がる目玉と目が合った。
「……ホープ」
 私の左胸に開くものよりも、大きくて真っ赤な目玉だ。それが意味することはすなわち、終わりの時が近いということだ。零れた言葉が思いがず震えたのは、私がこの子の末路を見届けなければならないかもしれない、恐れからか。
 ふわふわとした柔らかな銀色の髪が降ってくる。水の匂い。薪の爆ぜる音。横穴を照らす、オレンジ色の光と影。
 そのすべてが夢現のようだった。唇に触れた、柔らかな感触も。切なそうに細められたエメラルドグリーンの瞳さえも。
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