2017.01.07 執筆
2018.03.03 公開

かじかんだ指先

かじかんだ指先を温めるように、はあーっと息を吐く。
振り落ちてくる牡丹雪とは対照的に、ライトニングの白い息が立ち昇っていった。洗い物をお湯で行うようになってから、すっかり手の先はかさついている。水分を失ってカサカサになった手のひらをこすり合わせて、僅かばかりの暖を求めた。
「ああもうこんなに冷え切って。手袋は忘れてしまったんですか?」
覗き込むようにして落ちてきた声は、待ち合わせしていた相手のものだ。きっかり約束の時間の五分前。几帳面なこの男は、ライトニングの予想通りの時刻に予想外の場所から現れた。
頭上から降ってきた声に驚きを噛み締めながら、ライトニングは口元を緩めて微笑む。
「どうせ手袋は不要になる」
手にとった相手の袖口から伸びる白い指先。柔らかい皮膚から伝わる熱は、いつだって温かいのだから。
CLOSE