2017.12.03 加筆修正

ドレッドノート大爆進!

 ヤシャス山で、ドレッドノートが発見された。
 発掘中に発見されたらしい。かつて、ヴァイルピークスでホープが操縦したものと同じものだ。珍しいな、と現場の責任者でもあるホープは、手袋をはめた手で唇を撫でた。
 マハーバラ坑道などで採掘に従事している機械だ。ヤシャス山で見つかるとは思っていなかった。もしかすると、この辺りに見つかっていない坑道があるか、はたまた昔に存在していたか。とにかく、グラン=パルスの歴史を紐解く新たな手がかりになるかもしれない。そう思案するホープの後ろから、しみじみといったアリサの声が響いた。
「はあ、大きいですねえ」
 右腕として優秀なサポートを行ってくれるアリサは、初めてドレッドノートを見るらしく、そのずんぐりとした巨体を見上げている。しかし、すぐに興味が無くなったのだろう。その小柄な背中は、発掘現場へと紛れていった。アリサの後ろ姿を見送って、ホープはドレッドノートへと歩み寄る。
「……久しぶり」
 ルシになり、逃亡することになって出会ったパルスの機械。動かせるかもしれない。ホープの少年心をときめかせた機械仕掛けのボディは、今なお健在だった。初めてハンドルを握った時の、驚きと興奮は今なお忘れてなんていない。なんとなく懐かしくなって、周囲を見渡して誰の姿もないことを確認したホープは、ドレッドノートの機体をよじ登っていった。
「うわあ」
 錆まみれで鉄の匂いがする。ハンドルにレバー、それからいくつかのスイッチ。少年心をときめかせた機体が今また目の前に広がっているのを理解すると、いてもたってもいられず、ホープはつまみを捻ってみた。
 ドゥルン。微かな振動と共に、ドレッドノートが起動する。敵を蹴散らしながら歩いたヴァイルスピークの旅が蘇ってきて、懐かしくてたまらなくなった。
「よっと」
 左腕が持ち上がる。ハンドルを回転させれば、くるくるとアームが回るのがかっこよくて最高だ。
「とうっ、えい!」
 カシャン、ウィーン。ドレッドノートの胸部が開口する。そのままつまみを押せば、押し込まれていた砲台が展開された。ロボットの浪曼だ。砲台はいつだって男心を熱くさせる。
「行きます! ドレッドキャノン砲――!」
 突発的に思いついた適当な技名を叫びながらボタンを押したところで、呆れたような声が下から上ってきた。
「……何やってるんですか、先輩」
 ドレッドノートから鉄球が発射され、盛大な振動と共にホープ・エストハイムが転げ落ちたのはその直後のことである。
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