2016.04.11 執筆

神の寵愛

 ぬるりとしたものが胎内から引き抜かれたことを理解して、ライトニングは深く息を吐いた。
「……っ、あ…はっ……」
「そんなによがっちゃって。これがそんなに良かったですか?」
 見下ろす男の姿は、もはやライトニングの見知ったホープ・エストハイムではなかった。輝ける神・ブーニベルゼ。ホープの体を現人神の器として蘇ったブーニベルゼに、一体何度体を貫かれたと言うのだろう。着せ替え人形のように着せられたドレスはすでに引き裂かれ、かろうじて胸に引っかかっている。上質なシルクの下に潜り込んだ触手が、胸に、腹に、腿に這っていくのを、なすすべもなくライトニングは受け入れることしか出来なかった。
「……そんな、わけっ」
「股から愛液を滴らせて何を言っているんですか。……もっと素直になっていいんですよ。これが欲しい、ってね」
 しゅるり、とまるで性器を思わせるような触手がライトニングの胸の谷間を辿っていく。ブーニベルゼの意思によって生まれた触手は、彼の意のままにライトニングの体を暴いていった。その先端部分はまるでイソギンチャクのようにヒダがうねっている。引き裂いたドレスの隙間から侵入してきた触手が、まるで狙いを定めるかのようにしてライトニングの胸の先端部分に纏わりついた。
「ッぁ……!」
 カリ、と甘く乳首を吸い込まれ、堪えきれないようにライトニングの背がしなる。
「ふふ、可愛いです。ライトさん」
 ホープと同じ顔。同じ声。なのに、その響きにはまるで温かみがない。かつて人類に『希望』を与え、率先して導いてきた男の器で、神は冷酷に嗤った。
「あなたが人間ばかり贔屓するからです。女神であるあなたは、僕のしもべだ。そのことを、もっと分からせてあげなきゃいけませんね」
「……誰、が……っ」
 睨み上げようとするライトニングの言葉を妨害するように、触手が太ももにまとわりついた。粘着質な体液を滴らせながら、触手はある一点を目指して這い上がってくる。
「や、やめろ!」
 その明確な意志を持った動きに、ライトニングが体を捩じって反抗した。しかし、両手両足を太い触手によって絡めとられた彼女は、身動きを取ることができない。それどころか、足首に絡みついた触手はライトニングを持ち上げて、あろうことか腰を突き出すような恰好のまま宙に固定してしまう。
 とうの昔に下着を引きちぎられたその場所に、体液を滴らせた触手がたどり着いた。その先端部から二本の花粉管のような細い管が伸びてくる。繊細な管が、ライトニングの泉の入り口に触れ、中身を曝け出すように押し開いた。
「っ」
「ふふ、良い眺めですね」
 秘められたその場所が、男の前に露わになって、ライトニングは羞恥で真っ赤になった。
「やめろ……見るな」
「これはおしおきなんですよ? やめろと言われて、はいそうですかとやめるわけがないでしょう」
 くすくすと微笑んで、男が暴かれたその場所を覗き込む。
「ふふ、綺麗な薔薇色だ。分かります? びくびくって震えているんですよ」
 ふうっとわざとらしく息を吹きかければ、ライトニングの体が敏感に震える。その仕草が愛おしくて堪らないといった体で、男はうっとりと微笑んだ。
「あなたは僕のものだ。僕だけを見て、僕の生み出すものだけで、心も体も支配されなければならない」
 ねえ、分かります? そうやって、至近距離でアイスブルーの瞳を覗き込んで見せれば、彼女は瞳の奥に反旗の炎を宿して睨み返す。
「……誰がおまえのものになるか」
 けして神に屈することのない美しい女神。その誇り高さが、ライトニングが女神足りえた資格であり、同時にブーニベルゼの支配欲をくすぐる要素だった。
「――いけ」
 薄い唇が、短く宣言する。その瞬間、今の今までお預けをくらっていた触手が、待ちきれないようにライトニングの泉の中へと押し入った。
 白い粘着質な液体を飛び散らせて、うねる太い触手は、ぐんぐんとライトニングの奥へと進んでいく。
「ふぁっ……や、あっ、うぅ……っあ!」
 両足をばたつかせて、ライトニングはその激しい動きに耐えた。まるで、貪り食われるようだ。割り拓かれたその場所に、触手は容赦のない挿入で攻め立てた。
「んっ、あ! やっ! はあっ……!」
 触手から滲み出る体液のせいだろう。きゅんきゅんと腹の奥が刺激を欲してうねることを耐えるように、ライトニングは両瞼をぎゅっと閉じた。
 しかし、耐えることは許さないとでも言うように、残りの触手がライトニングの乳首に噛み付く。たわわな果実の先端部分を捻るように引っ張られて、おまけに泉の中を掻き回されて。訳が分からなくなりそうな快楽の渦に堪えられなくて、ライトニングは思わず瞼を開いた。
「見えますか? ライトさん。あなたの姿ですよ」
 それを待ち構えていたように、ホープの顔をした男が覗き込んだ。薄い靄のようなものがライトニングの前に広がって、一つの映像を映し出す。
 それは、鏡のようだった。薔薇色の髪をした女が、物欲しそうな顔をして、腰を震わせている。胸に、腿に、そして泉の中に触手を這わせた女が、より深い刺激を求めて、泉の中からしどどに愛液を濡らす。
「ちがっ……」
「違いませんよ。ライトさん、これはあなたの姿です」
 怪しく微笑んで、男はふうっとライトニングの耳を甘く舐めた。そんなわずかなことでさえも、今のライトニングにとっては凶悪な刺激だった。
「っああ!」
 浮かべた涙が散る。じゅくん、と粘着質な音を立てて触手がライトニングの最奥まで入り込んだ。心は屈さなくとも、すでに体は激しいブーニベルゼの刺激によって凋落寸前だった。受け容れるために降りてきた子宮に、触手がノックすることが、もはや馬鹿になるほど気持ちがいい。
「っぁ、っあ! あっ! っ、ぁ、ああ!」
 堪えきれない嬌声と共に、ライトニングの背が弓なりになった。びくんびくんと激しい痙攣を起こして、直後、弛緩する。体を沈めたライトニングを前に、うっとりと恍惚の表情を浮かべて、男は言った。
「イきましたね。すごくえっちで可愛かったです、ライトさん」
「……だれ、が」
「もう認めてしまえばいいんですよ。ライトニングはブーニベルゼのものだということを」
 ホープを象った全く違う生き物が嗤う。
 ――なぜ、彼がここまでライトニングに執着するのか。なぜ、その口調が、かつてホープがライトニングを前にした時のものと同じなのか。なぜ、その瞳の奥に宿る情愛の炎が屈折して向けられるのか。
 その理由の中にホープを見つけることが怖くて、ライトニングはもう考えることをやめてしまったけれど。
「ちがう。私は……ブーニベルゼ、おまえのもの、なんかじゃ……ない」
 縋るように。祈るように。告げられた言葉に、ブーニベルゼの口元が釣り上がる。
「僕が直接、あなたに分からせるしかないようですね」
 触手に好きにされたライトニングの前で、男は腰のベルトを引き抜いた。それが何を顕しているのか理解して、ライトニングは絞るように声を上げる。
「……神が今更性欲か?」
「神には欲はありません。あなたは女神で、僕は神だ。つがいが交わることに、今更意味など問わずとも良いでしょう」
 なら、おまえの私への執着は欲ではないのか。思わずそう言いかけたライトニングの言葉は、寸前のところで零れ落ずにすんだ。
 ズボンの中からそそり出た男の一物が、ライトニングの目の前に晒されたからだ。
「いきますよ、ライトさん」
「ま、待て……私はまだ……っ」
「待つわけないでしょう」
 そのまま、泉の中に男のモノが割り入れられた。すでに愛液でとろとろに蕩けたその箇所は、あっという間に男のモノを飲み込んで、奥へ奥へと誘ってしまう。きゅん、とライトニングの奥が、刺激を期待して疼くことが分かった。
「っ!」
 途端、弓なりになったライトニングの中に体を埋めて、男は低く囁く。
「もうイっちゃったんですか? ちょっと感じすぎじゃないですか」
「……っ、はっ」
 もはや声すら音にならない。荒い息を零しながら快楽の涙を浮かべるライトニングに、男が拭うようにキスをした。
「……ホープ」
「違いますよ。僕はブーニベルゼです」
 残酷な宣言がされる。そのまま、一気に最奥まで貫かれた。激しい挿入が続き、ライトニングはもはや声にならない嬌声を上げて、腰を振ることしかできなかった。繋がり合った箇所から粘着質な音が淫らに響いて、何もかもを曖昧にさせてしまう。
「ふふ、感じているあなたはとても素敵だ」
 びくびくと過敏に震えるライトニングの顎を持ち上げて、ホープがうっとりと微笑む。抗いきれない快楽に歪むアイスブルーの瞳を覗き込んで、神は女神に囁いた。
「永久に愛でてあげますから。――だから、あなたは僕だけを見ていればいい」
 きゅうっ、と腹の奥が収縮することが分かった。男のどこか甘やかな声が。瞳が。そして、ライトニングを貪るその熱が。思考の何もかもを奪い去ってゆく。
「はっあっ、ぁっ、あっあっあ!」
 零れ落ちる嬌声は、まるで自分の声じゃないみたいだ。どこか見知らぬ女の甲高い声。めちゃくちゃに首を振りながら、ライトニングは足をばたつかせ、背を仰け反らせた。直後、崩れ落ちるようにして体を沈ませる。
「あ……あぁ……」
 股の間からぽたぽたと透明な液体に混じって、白い体液が零れ落ちた。ライトニングが飲み込みきれなかった男の精液だ。それが腿を伝い落ちるのを霞んだ瞳で見つめていたライトニングは、ぎくりと身を強ばらせた。
「ッア!」
「まだです」
 ずん、と再び固さを取り戻した男のモノが、ライトニングの肉のヒダを掻き分けた。
「ぁ、ぅっ……ん、く、おまえ……まだ…!」
「何を言っているんですか、ライトさん。まだまだこれからですよ」
 にっこりと微笑まれてしまう。そんな男の背後では、触手がうねっている。体液を滴らせながら何かを待ちわびているような触手に、男は手を伸ばして囁いた。
「――おしおきですから、ね」
 ライトニングの腿の間をぬるぬると触手が滑っていく。一つ目の穴の中を男に塞がれていることを理解したのか、触手はライトニングの尻の形をなぞるようにして伝っていった。
「や、やめ……んんっ!」
「そんなにしっかり僕のを咥え込んで、やめるもないでしょう」
「はっ、ぅ、や……ん! ああッ!」
 尻の穴と泉の中を太い棒で掻き回されて、ライトニングは喉を仰け反らせた。途端、ぷるりと震える胸の先端に、再び別の触手が絡みつく。ナカを滅茶苦茶にされて、敏感なところに吸いつかれて。溢れる嬌声が、もはや悲鳴のようになっても、誰の助けもない。それどころか、ホープの顔をした男はライトニングにキスを落としながら、腰を打ち付けてくるのだ。
「さっきまでの強がりはどうしたんですか。こんなに吸い付いて……んっ、まるで搾り取られるみたいですよ」
 打ち付ける乾いた音と、水音が淫らに響き合う。
「あっ、あっ、ぁっ、あっ!」
 嫌なはずなのに。こんな男に好きにされて、許せるはずもないはずなのに。……それなのに、甲高い声を上げて腰を振っているのは一体誰だ。触手に尻を弄ばれて、乳首を捻られて。唇を好きに奪われて。こんなにも、無茶苦茶にされているのに。なのに。
「ライトさん」
 薄い唇が降ってくる。
 ――ひどく、懐かしい声だ。私のことを慕ってくれたふわふわとした銀髪が甦る。
『あの……僕も。できたら僕も、ライトさんを守れたらって』
 抱きしめた肩口に顔を埋めて、少年のホープが照れくさそうに笑う。どこか危うげで頼りない、しかし、だからこそ目を離すことのできない少年だった。そんな彼を、正しい道に導いてやらねばと思った。もう道を誤らせてなるもんか――…。そう思った次の瞬間には、私は『守る』と呟いて、ホープを抱きしめていたのだ。
 そんな私を前に、ホープもまた守ると言ってくれた。咄嗟に何を言われたのか分からなくて。でも、その意味に気がついた時、嬉しくて。私は照れ隠しのように、ホープの頬を小突いた。ホープもまた照れ臭そうに笑ってみせて、そして。
「ライトさん」
 あの時と同じ、エメラルドグリーンの瞳がライトニングを見下ろしていた。
「……ブーニベルゼ」
「ええ、そうです。僕はブーニベルゼ」
 精一杯の虚勢を込めて睨みあげれば、神は微かに微笑んでみせた。その整った顔に指先を伸ばす。触れたブーニベルゼの頬は、しっとりとしていた。その造形は神というよりも、まるで人そのもの。当たり前だ。ブーニベルゼはホープを器にしてしまったのだから。
 一筋の涙が、頬を伝い流れた。
「――ああ」
 認めることが怖かった。もう、私が守ると言った少年はどこにもいないのだと突きつけられるのが恐ろしくてたまらなかった。あの時、零れ落ちてしまったホープの心を見つけることができなかったのは、私が向き合うことを恐れたからだ。ブーニベルゼの中に、ホープの心が落ちてしまって、融けて、混じり合ってしまったことを認めたくなかったからだ。
「ずっと一人にさせて、すまなかった」
「ようやく僕のものになってくれる気になったんですか?」
 静かにブーニベルゼは、ライトニングに問いかける。それにライトニングは首を横に振ってみせた。
「どれほど蹂躙されようが、私はけしてブーニベルゼに屈しない」
「……へえ」
 面白くない、そう言いたげにエメラルドグリーンの瞳がゆっくりと細められる。その顔に添えた手のひらを、そっと胸元に引き寄せた。ドレスなんてとうの昔に剥がれ落ちている。裸の胸の上に掻き寄せた銀髪は、あの頃と同じようにふわふわとしていて、なんだかまた泣いてしまいそうだ。
「だから、認めることが怖かったんだ。……ホープ、おまえの心が、ここでずっと眠っていることを」
「器になった男ですか。……ホープ・エストハイムは、もうどこにもいない」
 抱き寄せられたホープの顔で、ブーニベルゼは言う。神に心は視えない。だから、零れ落ちたホープの心の行方なんて知ったことではなかっただろう。いつの間にか、融けて混じりあったその心が神と同化して、口調や思考に片鱗を見せるようになったことさえ気付いていないのかもしれない。
 ホープはずっと“ここ”にいた。“ここ”で私のことを待っていた。だけど、私はそれを認めることができなくて、それで。
「守ると言ったのに、守ってやれなくて――…すまない」
 涙が落ちる。そんなライトニングの胸の中で、見上げた男の顔は怒りの表情に染まっていた。
「同情ですか」
 神に、同情。なんて愚かで哀れな女神。男はライトニングの胸に顔を埋めたまま、その薔薇色に色づく乳首に噛み付いてみせた。
「ッ!」
 過敏になった箇所に与えられた刺激に、ライトニングの肩が跳ねる。もう何度も繋がり合った泉は、たったそれだけのことで再び疼きを取り戻してしまう。胸から腹へ、腹から腰へ。するすると噛み付く場所を変えていく男は、やがて大きく割り拓かれたその場所へと辿り着いた。
「あれほどおしおきされても、あなたは全然分かっていない。まだ足りないようですね」
 僕自らが、あなたに教えてあげます。光栄だと思ってください。そう告げて、男は泉のほとりの花芯へ吸い付いてみせた。途端、全身に甘い痺れが走って、ライトニングは首を振った。体はもう何度も絶頂を体験して、単純な刺激でさえもバカになるほど心地いい。そうだというのに最も敏感なその場所に吸いつかれて、ちゅうちゅうと音を立てて吸い上げられてしまえば。
「ふあっ……ぁああ」
「次から次へと溢れてきて、本当にはしたない人ですね」
 ちゅる、とまた吸い上げられる。敏感な箇所を舌で舐られるだけじゃない。白い歯が、まるで形を確かめるように甘くその場所を噛む。
「っっ!」
 白色が弾けた。
「ぁ、んっ、くぅ……っ」
 訳が分からなくなる。度重なる絶頂に。飽きることなく繰り返される快楽の刺激に。
 自分の指先が、まるで他人の物のようだ。弾け飛びそうになる意識をなんとか手繰り寄せて、ライトニングはブーニベルゼへ手のひらを伸ばした。
「……っ、おまえを、私は……んっ、ぁっ……!」
「僕を、……はぁっ、どうするんですって?」
「今度……こそ、守る、から……っぁあッ!」
 びくん、とライトニングの背がしなる。いつしかまた、ブーニベルゼによって何度も何度も突き上げられていた。彼には果てというものがないのだろうか。もはや心地よさを通り過ぎた責め苦に、ライトニングの瞼から透明な涙が散る。激しい雷撃のような絶頂に、とうとうライトニングは大きく身をよじって、意識を手放した。
 触手に全身を預けた彼女は、裸の胸を上下させたまま体液を滴り落としている。整ったその美しい横顔を静かに見下ろして、ブーニベルゼは彼女の胎内から己を引き抜いた。
『僕もあなたを守ってみせます』
 薄く開いた彼女の唇に、そっと唇を寄せてから、ブーニベルゼは今しがた自分が口にした言葉を理解できずにいた。
「……僕は、何を」
 僕は、神だ。輝ける神、ブーニベルゼだ。それが揺るぐだなんてこと、あるはずがない。
 そう噛み締めてから、首を振る。神は神であって、それ以上でも以下でもないのだ。すべては予定調和。手のひらの中で行われなければならない。……理解不能なことは、あってはならないのだ。
「ただの人間風情、何ができる」
 嘲笑うかのように宣言してみせれば、かすかなその灯火は、あっけなく姿を消した。まるで蛍火のように。
「僕は神だ」
 そして、ライトニングはそのつがいの女神。
 神と女神で、新世界は開けていく。そこには完璧を許された生き物たちだけが存在していて、清らかで美しくなくてはならないのだ。そうでなければならないのだ。
「……何ができると言うんだ。ホープ・エストハイム」
 薔薇色の幻に惑わされた器。どうして、それが今さら僕の目の前に現れる。何かができるというわけでもない。大した力があるわけでもない。だからこそ、完璧を求めようとするブーニベルゼの目には煩わしく映った。
「……ん」
 ブーニベルゼの背後で、ライトニングが微かなため息を漏らした。度重なる快楽に流されたと言えども、彼女の身はすでに女神へと転じている。その強靭な肉体故に、すぐに回復へと転じるはずだ。まもなく意識を取り戻すことだろう。
 ライトニングの顎を掴んで、ブーニベルゼは彼女の目覚めを待った。――この女神だけには知られてはならない。ライトさんは僕のものだ。ブーニベルゼだけのものだ。けして、人間になど奪わせない。
「愛しい愛しい、僕の女神」
 ゆっくりと、ライトニングの瞼が開かれる。
「僕だけを見て」
 歪んだ微笑みを浮かべて、ブーニベルゼはその柔らかな唇に口付けた。
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